多摩地域で“伝える”ことに向き合う人やその地域の魅力をたどる広報リレー企画。第3弾は、今年で市制施行70周年を迎える調布市にお伺いしました!
調布市広報課では“自治体らしくない”発想で職員の個性とまちの魅力を、動画・紙面・Webで軽やかに届けています。
TAMA ebooks 10周年記念の本取材では、その舞台裏と狙いを聞いてきました!
(取材日:2025年9月3日)
さまざまな機能をひとつにした「調布市文化会館たづくり」
今回のインタビュー会場は調布市役所に隣接する「調布市文化会館たづくり」。市制施行70周年を迎えた調布市ですが、調布文化会館たづくりも今年開館30周年を迎えます。
さまざまな機能をひとつに束ねた文化の香り高い複合施設で、館内には喫茶、中央図書館、コミュニティFM放送局などもあります。
広報課の方々曰く、たづくりの建物の方が市役所だと思って入られる方もいるとかいないとか。
調布市広報課の皆さんのご紹介

荒川さん(写真左):広報課主任。平成24年度入庁。
オリンピック・パラリンピック担当などを経て、現在広報課4年目。主にホームページの管理・運営を行う。調布市には10年以上在住。
青木さん(写真中央):魅力発信担当係長。平成26年度入庁。
人事課などを経て令和6年度より広報課に配属となる。人事課時代に出演した漫才PR動画が好評で広報課によばれた説あり。
田澤さん(写真右):広報課主任。平成21年度に入庁し、文化・都市整備・福祉部門を経て、広報課に配属されて5年目。主に市報を担当としている。LINE配信担当でもある。
三者三様の“伝える力”──調布市広報課の仕事
始まりました、広報リレー企画第3弾!
まずは皆さんに調布市広報課のお仕事をお尋ねしました。
漫才の趣味が高じて広報へ?
青木さん:私は漫才を趣味としておりまして、人事課にいたころ、漫才を使って市のPR動画を作りました。相方は調布市出身の大食い系YouTuberオックンです。
その2年後の令和6年度に広報課へ異動となり、現在はInstagramやYouTubeのショート動画を中心に、職員紹介など“人”の魅力が伝わる発信に力を入れています。
70周年のロゴが貼られた謎のボックス、その正体は──?
青木さん:職員紹介のインタビューではこの“くじ引き”を使います。番号付きのボールを引いてもらい、引いた番号の質問に答えていく仕組みです。何が出るかわからないので、職員の素の部分が垣間見えるのが良いところです。
いつもは面白そうだなと思った職員に声をかけてインタビューしているのですが、モノマネが得意な職員が自己推薦で参加して、全部の質問にモノマネで答えてくれた回は好評でしたね。
──調布市の職員さんの中には面白い人がたくさんいるんですね。
青木さん:みんな隠してるだけでたくさんいますね。
広報のこういった仕事に触れて“何をやっても良いんだよ”という雰囲気を出すことで、自分の課の決まった仕事だけではなくて、そこからどんどん自分たちで考えて、こういったことをやりたいという自己実現につながっていければ良いなと思います。
広報課は他の課と比べても自由度が高いので、いい意味で“自治体らしくない広報”ができれば。
特技や趣味を持った職員を発掘して、活かせる広報活動ができるようにしたいと思っています。
市報は“手に取っていただく一枚”から
田澤さん:主に市報を担当しています。
いろいろな特技を持つ市民や職員を活かし、手に取っていただけるような面白い紙面づくりを心がけています。いい意味での“悪ふざけ”もします(笑)
例えば、少し前には市の職員に“筋肉自慢”を募集しました。日頃、筋トレで鍛え上げている職員から応募が集まり、表紙に出ていただきました。
調布市の総合体育館前で撮影して表紙に載せたのですが、施設利用者や新規のお問い合わせも増えたそうでよかったです。
──ちなみにオーディションはあったんですか?
田澤さん:そこまでは…(笑)20人くらい応募があったらやろうかなとは思っていましたが、さすがにそこまではいきませんでしたね。
▼筋肉自慢の表紙が好評だった市報ちょうふ令和7年7月5日号
10年ぶりの調布市公式ホームページリニューアルと「もっと調布」
荒川さん:私はホームページの管理運営をしています。
昨年、約10年ぶりにフルリニューアルを行いました。毎日のように各課から多数の作成依頼が来るのを裁きながら、なるべく見やすく・探しやすいサイトになるように心がけて作りました。
その中でも調布の魅力を発信するサイト「もっと調布」は市のホームページが楽しくなるような取り組みのひとつとして、青木が作っている動画だったり、市のおすすめスポットだったりを掲載して、市内外どちらの人にも楽しめるように作りました。
──「いい意味で“自治体らしくない広報”ができれば」と語る青木さんに、悪ふざけも辞さないお茶目な広報紙をつくる田澤さん。そして市民に寄り添いながらホームページを楽しい場所にしようと奮闘する荒川さん。
三者三様の視点が、調布の情報発信を前へ進めています。ここからは、調布市がいま注力している取り組みをご紹介します。
注力している取り組みや今後のイベント
青木さん:今年は市制施行70周年ということもあり、さまざまな事業を展開しています。
10月には「地球の歩き方 調布市」が出版されます。(10月23日発売)
表紙のデザインは市民の皆さんに投票いただき、決定しました。
あとは記念式典で流す映像も作っていて、調布市にゆかりのある落語家・立川晴の輔さんに市の魅力や歴史を“落語風”で語っていただく映像作品を作っています。
──調布市のホームページで70周年事業を拝見したのですが、70周年ロゴが素敵ですね。ロゴができるまでの過程を載せているのも面白いです。
荒川さん:70周年のロゴは市にゆかりのあるイラストレーターである黒木ユタカさんに依頼して、何個かデザインをつくっていただき、市民投票で決まりました。
他にも色々グッズを作っていて、シールはお子さま向けに市のイベントなどで配っています。
こんなところにも市制施行70周年
京王多摩川駅すぐ近くのドーナツ店「SIUNAUS SWEETS(シウナススイーツ)」

応募が30倍!?周年イヤーの調布市、反響が大きかった発信とは?
青木さん:最近で言うと、テレビ東京系列で毎週土曜よる9時から放送中の人気番組「出没!アド街ック天国」が番組史上初の公開収録を調布市で行うということで、今いるこのたづくりで行うんですが、その観覧者募集にものすごい数のお申し込みがありました。
調布市内在住・在勤・在学の18歳以上(高校生を除く)の方を対象に、150名を募集したのですが、30倍以上のお申し込みをいただきました。(番組の力かもしれないですが……)
調布市制施行70周年を記念しての特集になっています。
(15分拡大スペシャルにて10月18日(土)放映)
あとは、私とオックンの漫才動画はたくさんコメントなどもいただいたり……。当時は人事課にいたので、人事にからめたネタで調布市の職員の採用活動PR動画をアップしたのですが、それを見て実際に試験を受けて職員になった人もいるとかいないとか。
そしてこの前、AIと漫才をやって、とんでもないことになったんです……。
これもいつかアップしたいと思います。お楽しみに。
地域の魅力──“日常にごほうび”がある街、調布
ここからは、広報課の三人が感じる“ありきたりではない”調布のリアルをご紹介します。
青木さん:(調布の魅力というと)皆さん大体同じことを言ってしまうので、我々広報課はありきたりなことを答えてはいけないと(課長から)言われています(笑)
都心からのアクセスが良い、自然がある──などはNGワードです。
なのでちょっと趣味全開でいきますね。
私は走るのが好きで、自分で言うのもなんですがシリアスランナーでして。フルマラソンのベストが2時間49分。サブエガ(※)を達成しています。
調布市内を走っていると、結構ランニングコース良いところあるな、と。
多摩川、味の素スタジアムの周りや野川など、走りやすい場所が多く、ランニングコースが充実していると思います。
※サブエガ:フルマラソンを2時間50分未満で完走することを指す「江頭2:50」さんが由来のマラソン用語。

あとは映画を観るのも好きなんですが、IMAXと4DXが両方揃っている映画館は他ではあまりないのかな?それが調布の駅前にあるということで、映画のまちと言われるだけあって充実してますね。
田澤さん:私は飲食店が結構充実しているのかなと感じています。
都心の方は流行りものを食べると良い値段しちゃいますが、調布は少し割安で食べられる気がします。
──調布のグルメでオススメはありますか?
田澤さん:最近は子供を連れて、鬼太郎茶屋に行ったあと「ぱくぱく くもくま堂」でかき氷を食べました。かき氷がくまの形になっていてめちゃくちゃ可愛いんです。
▼深大寺の近くから昨年天神通りに移転した「鬼太郎茶屋」
▼めちゃくちゃ可愛いかき氷が食べられる「ぱくぱく くもくま堂」
荒川さん:調布市内に10年以上住んでいたこともあって感じたのですが、子どもと一緒に楽しめる場所がたくさんあります。
実はJAXAの研究施設があって見学もできたり、東にはせんがわ劇場、西にいけば味の素スタジアムがあったり、ぎゅっといろんなものが詰まっているので遊ぶ選択肢に困ることはありませんでした。
武蔵の森公園は飛行場が近くにあり、飛行機の発着が見られたりします。
中央道の高架下にある公園は陽射しを避けて遊べるし、「鬼太郎ひろば」では水がでる遊具があったり。その他にも鬼太郎の住んでいたお家をモチーフにした滑り台、ぬりかべのボルダリングがあったり、キャラクターの像があったり。
たくさんあるのにどこもそんなに混んでおらず、広い場所で安全に遊びやすいと感じていました。
水木マンガの生まれた街 調布
調布市は、「ゲゲゲの鬼太郎」の作者である調布市名誉市民・水木しげるさんが50年以上暮らした「水木マンガの生まれた街」です。市内ではさまざまなところで鬼太郎や、その仲間たちに出会えます。鬼太郎と仲間たちを探しに市内を探検してみよう!
©水木プロ
──広報課の皆さんにとてもリアルな調布市の魅力をたくさんご紹介いただきました!
ここからはその裏側、魅力の一方でまちが直面する課題についてお尋ねしました。
調布市の課題と広報課の次なる一歩
田澤さん:今の時代どこも同じだとは思いますが、人材確保の難しさでしょうか。市役所でも採用に苦労しているというのはあるので。
直近の市報でも人材確保の記事がでてきているし、市内の企業の魅力をPRしてくれないかという相談はいただきますね。
なので今後考えている企画としては、市民の皆さんに喜んでいただけるような、魅力的な市内企業の協賛なんかができたら良いなと考えております。
荒川さん:実は、多摩地域の中でも調布市の地価がどんどん上がってきていて、調布の職員が市内に住めないという……。
有事の際には職員が出動しなければいけないんですが、近くに住めないと集まったりするのが難しくなってしまいます。
調布の魅力が上がって、比例して地価が上がっていくというのは良いことですがこういった側面もあったりします。
行政の強みというところでは、信頼されている広報発信の手段をたくさん持っているので、それをもっと広く、いろいろな情報を効果的に伝えていけるようにしたいです。
青木さん:若い人に対しての魅力発信はできてなかったなというのと、せっかく発信した情報が埋もれていしまっていたなというのは感じています。
今までは市のInstagramでもお店紹介などはしていなかったのですが、ユーザーが検索をした時に市のアカウントが引っかかるためには必要かと思うので、これからはそういったお店紹介もできるようにしていきたいと思っています。
ただ、やはり自治体の広報としては公平性を保たなければならないのでその辺のスキームを考えていきたいなと思います。
青木さん:YouTubeは現在フォロワーが約5,000人いて収益化もしているのですが、真面目な情報が多く、その中にある面白い動画が埋もれてしまっているのが現状です。
たくさんの人に見てもらうためには、真面目な情報の中に面白い市の魅力をどういう風に発信するかが大事だなあと思います。
お茶目な(?)調布市広報課からのメッセージ
最後に、記事をご覧になる方や他の自治体の方に対して、調布市の広報課の皆さんから伝えたいメッセージを伺いました。
青木さん:いい意味で“自治体らしくない広報”を心がけています。これからも調布市の魅力を発信していきますのでぜひご注目ください!
田澤さん:企業さんでも、市の職員になりたいという人でもいいし、インフルエンサーも大歓迎!!
調布市の広報課と一緒に仕事をしてみたいなと思った方はご連絡ください〜!
荒川さん:いま2人が言ったのが全てです!仲間を募集しています!
編集後記──「自治体らしくない」の、その先へ

TAMA ebooks10周年を記念した広報リレー企画、第3弾は調布市でした。
今回の取材を通じて、皆さんの調布の“面白い”をまっすぐ届けたいという思いと、行政としての公平性を守る責任を、同じ手のひらでどちらも取りこぼさないように大事に釣り合わせている姿が印象に残りました。
誰に、何を、どの順で伝えるか──
楽しさで振り向いていただき、必要な情報へ自然に届く流れを整える。その地道な工夫から、私たちも発信のあり方を学ばせていただきました。
さて、広報課リレー企画はまだまだ続きます!
これからも多摩地域の各地で“伝える”ことに向き合う人やその地域の魅力をたどっていきます。次はどんなまち、どんな魅力に出会えるでしょうか。どうぞご期待ください。
調布市広報課の皆さん、ご協力ありがとうございました!