東京都町田市。駅前のにぎわいや自然あふれる北部の里山など、多彩な顔をもつこのまちでは、広報課の皆さんが日々“伝えること”に心を尽くしています。
SNS、Web、広報紙――
発信の手段は多様でも、その根底にあるのは「市民一人ひとりに届く情報とは何か」を問い続ける姿勢。
本記事では、広報課の最前線で活躍する三人の声を通じて、町田市が目指す「なんだ かんだ まちだ」の本質に迫ります。
まちだを体現するスローガン「なんだ かんだ まちだ」とは?
まちだ未来づくりビジョン2040では、未来の町田市を一言で表すキャッチコピー「なんだ かんだ まちだ」を掲げ、その実現を目指しています。
「なんだかんだ言っても、やっぱり町田が一番。」様々な理由で一度は町田を離れたとしても、肩肘張らずに暮らせる環境を求めて結局は町田に帰ってくるような、そんなみんなに愛されるまち、ほかにはないユニークなまちのイメージを表現したキャッチコピーです。
町田市広報課の皆さんのご紹介
所属:政策経営部広報課
得地さん(写真左): 2010年入庁。多摩市出身。広報課主任。
市民センター窓口や総務課などを経て、今年「キャリアチャレンジ制度」を利用して広報課に。担当業務は主にシティプロモーション。プレスリリースや記者会見などの対応も行う。
川島さん(写真中央): 2022年入庁。町田市出身。広報課主任。
民間企業から転職。市民税課を経て、今年希望していた広報課に配属される。主な業務はSNSやホームページの管理、LINEの配信(毎月2回、広報紙発行のタイミングで配信)。
上田さん(写真右): 2020年入庁。町田市出身。広報課主任。
民間企業から転職し、障がい福祉課を経て、入庁前から興味があったという広報課を希望し配属、現在3年目。主に「広報まちだ」の特徴でもある、1〜2面の特集記事のためのインタビューや編集業務の他に、記者会見、プレスリリースの対応も行う。
町田市がいま、注力している取り組み
町田市広報課では、暮らしに身近な情報を届けるため、日々広報課の職員さんたちが奮闘しています。そんな広報課が現在注力しているという取り組みについてお伺いしました。
シティプロモーションサイト「まちだで好きを続ける」
得地さん:シティプロモーションサイト「まちだで好きを続ける」では、町田市の魅力を発見し体感できるサイトとして、町田で暮らす人や働く人、FC町田ゼルビア(※)の選手など、町田にかかわる皆さまとともに町田の魅力を発信するインタビュー記事を月2本以上掲載しています。
執筆の委託事業者やライターとの調整、記事を公開する際にはXなどのSNSへの発信も行っています。サイト内の記事では町田の暮らしぶりや雰囲気が伝わるよう心がけています。
※町田市を本拠地とするプロサッカークラブ。J1リーグに所属。
町田市シティプロモーションサイト「まちだで好きを続ける」
イベント情報集約サイト「まちだイベントなび」
川島さん:町田市ホームページに掲載している「まちだイベントなび」では市内のイベント情報をAIで収集して掲載しており、一覧形式で公開しています。
イベント情報は毎週更新があり、現在は150以上のイベントが掲載されています。また、主催者などからの掲載希望の受付も行っています。
夏のイベントの中には、泊まりがけのキャンプなど市外の方でも参加できるものもあるので、これをきっかけに町田市に足を運んでいただけると嬉しく思います。
町田市内で開催されるイベント情報を掲載「まちだイベントなび」
高齢者向けのスマートフォン講座(デジタルデバイド対策)
上田さん:SNSなどの普及の裏で、デジタル機器に不慣れで操作に不安のある高齢者に向けたスマートフォン講座を昨年度から行っています。
内容としては、主に広報紙等の市の情報をデジタルでご覧いただく方法を学んでいただいています。
今年度は町田市と包括連携協定を締結している東京海上日動火災保険(株)さん、その連携先の(株)ノジマさんと共催することで各社の強みを生かし、受講者とマンツーマンに近い実施ができているため、さらに満足度の高い講座になっています。
大変なところやつまずくポイントは人それぞれですが、それを知る事も紙面作りに役立っています。
この講座の情報は広報紙に小さく載せただけだったので、当初は応募があるのか不安もありましたが、発行日の受付開始後わずか2時間で全ての枠が埋まり、広報紙の情報が市民の皆さんに届いていると実感できたのがとても嬉しかったです。
スマートフォン講座の情報が掲載された広報まちだ令和7年5月15日号
※講座の情報は3ページ目に掲載されています。
仕事で大切にしていることや大変なことは?
得地さん:プレスリリースなどの外部に発信する文書が、端的でわかりやすい文章・構成になっているかを意識して作成しています。
また、急なプレスリリース発信の依頼に即日対応しなければいけないこともありますが、できる限り迅速に対応することで情報の鮮度を落とさないようにすることも心がけています。
川島さん:ホームページ管理の基本の操作方法を覚えるのに苦労しています。
町田市のホームページは誰もが見やすいように工夫されており、そのためのルールや決まりがあるので、他の課の人たちへの説明や「もっとこうした方が良い」などのアドバイスを通して、市民の皆さんが見やすいホームページを作るために日々努力しています。
上田さん:ただ発信するのではなく、“伝わること”を意識し、その先の行動につながるよう心がけています。
また、市民にとってわかりやすい情報を発信するために市民目線を常に意識するようにしています。市役所の専門用語を当たり前のように使ってしまうと市民の皆さんには伝わらないので、できる限り平易な言葉で表現できるよう心がけています。
――町田市では昨年度に発信されたプレスリリースの件数が316件にものぼります。これは多摩地域の平均と比べてみても約4倍の件数になり、とても多いことがわかります。
急な依頼にも即応するスピード感、誰にでも伝わりやすい言葉選び、市民が迷わず情報にたどり着ける導線設計。年間300件を超える発信の背景には、日々小さな努力と工夫を積み重ね、「伝えること」に本気で向き合う姿がありました。
反響があった「まちだいきものかるた」
上田さん:広報まちだ7月1日号で「まちだいきものかるた」制作についての特集を組んだのですが、発行後すぐに担当の課に数件問い合わせが入り、非売品ながら“ぜひ販売してほしい”というご要望をいただきました。
「生きもの発見レポート」という、町田市内で発見した生きものを写真で撮ってLINEで市に報告する取り組みがあるのですが、今回の「まちだいきものかるた」で取り上げた生きものはその発見レポートの報告をもとに選定されました。
このかるたはA3サイズやA4サイズの拡大版も制作されており、イベントで使ったりもできるので、教材としてもおすすめです。
「まちだいきものかるた」の特集が掲載されている広報まちだ令和7年7月1日号
広報課の皆さんが感じる「まちだの魅力」
得地さん:町田駅周辺やグランベリーパークのように商業施設が集まったエリアがありながら、薬師池などの公園もあり多彩な要素が幅広く揃っているところ。
シティプロモーション業務で市民のインタビューに関わっているのもあるかもしれませんが、市民グループでの活動などを活発に行なっている市民が多い印象があります。

川島さん:広報課にきて改めて感じたのですが、市民が中心となってイベントなどを活発に開催しているところだと思います。
前述の「まちだイベントなび」では毎週30〜50件近くのイベント情報が集まっており、市役所主催以外にもたくさんイベントが開催されていることがわかります。市民の方からも活気のあるまちづくりにしようとしている想いを感じます。
上田さん:バランスの良さだと思います。
都心に出やすい交通の利便性や、生活に必要なものが手に入る商業施設が揃っていること。身近に感じられる自然や公園が揃っていること。
町田市の「なんだ かんだ まちだ」のキャッチコピー通りにバランスがよく、「なんだかんだ言っても、やっぱり町田が一番。」と思えるような住みやすいまちになっていると思います。
地元民がそっと教える、町田の“ちょっと意外な”魅力スポット
ここまで「まちだの魅力」についてお伺いしてきましたが、今度は知る人ぞ知るような“意外な魅力”についてお聞きしました。
市外に住む方には“まだ知られていない!?”町田の魅力を3つご紹介します。
境川ゆっくりロード
四季を感じる、川沿いの癒しの小道
町田市と神奈川県の境を流れる境川。その川沿いには「境川ゆっくりロード」と呼ばれる歩道が整備されており、地元の人の散歩やジョギングの定番コースとなっています。
「春は桜、夏は青葉、秋は紅葉と、季節ごとに違う表情を見せてくれる良いところなのに意外と知られていないのではないかと思います。」(得地さん)
恩田川の桜並木
駅から歩いてすぐ、春になると現れる桜のトンネル
成瀬駅からほど近い恩田川沿いは、町田市内でも有数の桜スポット。春になると、川の両岸にびっしりと咲く桜がまるでトンネルのように続き、地域の人々に親しまれています。
「学生時代には、友だちと近くのお肉屋さんで買ったコロッケを食べ歩きしたのが良い思い出です。」(川島さん)
鶴川香山園(つるかわかごやまえん)
駅近なのに、静けさに包まれる庭園空間
今年オープンした「鶴川香山園」は、もともと個人が所有していた庭と建物を市が取得し整備した新しい公園です。手入れされた庭や日本家屋の佇まいが美しく、母屋には地元の食材を使った和食レストランも併設されています。
「駅から徒歩数分とは思えない、静かで落ち着いた時間が流れる場所です。」(上田さん)
町田の課題と理想像 〜若者が“住み続けたくなる”まちへ〜
魅力がたくさんある町田市では、ここ数年で0歳〜14歳の転入超過数が全国1位となるなど、若い家族世代の流入が進んでいます。一方で、20代では転出超過に転じる傾向があるそうです。
そこで、町田市の課題とこれからの理想像についてお伺いしました。
川島さん:一度住んだ方がこれからも住み続けたいと思ってもらえるようなまちにしたいです。
私も町田周辺の大学に通っていた際、友人が町田に住んでいたりしましたが、社会人になって市外へ引っ越してしまうのを何度も目の当たりにし、寂しく思っていました。
町田は新宿から小田急線で一本ですし、通勤の利便性も良いと思うので、社会人になってもここに住みたいと思ってもらえるようなまちにすることが課題かなと思っています。
広報課として町田のたくさんある魅力をわかりやすく発信することで、町田に住みたいと思えるような人を増やしていきたいです。
上田さん:町田駅周辺の開発計画が進んでいます。
今後駅周辺が生まれ変わっていき、賑わいが増してまちとしての魅力が向上していけば、将来的には若い人の転出防止につながっていく可能性があると思いますし、私も町田で生まれ育った身としては駅前が生まれ変わるのはとても楽しみです。
得地さん:20代や子育て世代に定着してもらうのが、理想像であり課題ですね。
町田の魅力を発信して、住み続けたいと思ってもらえるよう少しでも貢献できると良いなと思っています。
町田市広報課が“伝えたい”メッセージ

得地さん:すでにお住まいの方には住み続けたいと思っていただきたいし、市外の方には町田にこんな魅力があるんだということを知ってもらいたいので、町田の魅力がたくさん詰まっているシティプロモーションサイトをぜひご覧ください。
川島さん:市のホームページは市が直接発信する情報が多数集まっている場所だと思うので、皆さんの生活の役に立てるような情報の配信をしていきたいと思います。
ホームページをきっかけに“町田市っていいな”と思っていただけるように頑張りますので、ぜひご覧いただけると嬉しいです。
上田さん:「広報まちだ」を多くの方に読んでもらいたいです。
TAMA ebooksさんもそうですが、今はいろんな広報紙の見方があります。点字や声の広報などのバリアフリーに対応した形式でも作っているので、それぞれに合ったツールでご覧いただければと思います。
伝えることは、まちの未来をつくること
今回の町田市での取材は、TAMA ebooks10周年を記念した広報リレー企画の第1弾でした。
印象的だったのは、広報課の皆さんの和やかな雰囲気と、チームとしての信頼関係の深さ。
地元出身で、転職して入庁されたというお二人にも、「なんだ かんだ まちだ」というキャッチコピーを自然体で体現している印象を受けました。
また、取材を通して強く感じたのは、市民目線が組織の文化として根づいていること。
わかりやすい表現で、必要な場面ではていねいな補足を加えてくださる応対には、「伝わる広報」を大切にする姿勢が感じられました。
町田市広報課の皆さんの一つひとつの言葉と取り組みが、多摩地域における情報発信の可能性を明るく照らしている――そんな思いとともに、次なる地域へバトンをつなぎます。
このリレー企画では、これからも多摩地域の各地で“伝える”ことに向き合う人やその地域の魅力をたどっていきます。次はどんなまち、どんな魅力に出会えるのか。どうぞご期待ください。
町田市広報課の皆さん、ありがとうございました!